新聞折込・ポスティングチラシはなぜ失敗するのか?
販促コンサルタントをしていると、必ず皆さんから相談されるのが
新聞折込広告・ポスティング広告で反応率を高めたい
というご要望です。
結論から言うと「掲示する商品価格次第」で、
それ以外はどんな工夫をしようと単発の折込チラシで効果を高めることは不可能です。
まず、あなた自身が思い返してください。
1万円以上の商品を「たまたま見た折込チラシ」で購入にまで至った経験はどれくらいありますか?
おそらくほとんどの方が一生に一度あるかないか程度ではないでしょうか。
ではなぜ、そんな天文学的に低い確率の折込チラシで効果が出ると思い込んでしまうのか。
これにはきっちりとロジカルに説明できる理由があります。
折込チラシの平均反応率(回収率)の罠
例えば新聞折込広告を30万部打ったとしましょう。
チラシを巻く側は「30万人も見てくれれば、300人くらいは問い合わせが来るんじゃないか」
チラシ反響率の平均値は0.1%という適当な統計に惑わされて、ついそんな甘い夢を見る。
大前提として「チラシ反響率の平均値は0.1%」は全くのデタラメだと思ってください。
正確にはデタラメではないのですが、あなたが打とうとしている折込チラシの反応率が0.1%などではないということをしっかり理解してください。
世の中のありとあらゆる業種・業態・サービス・商品で、あらゆる価格帯、時にはとんでもなくお得な金額設定や「無料!」なんていうものも含んで、全てをごちゃ混ぜにして出した平均値が
「チラシ反響率の平均値は0.1%」と言う本当の意味です。
なので、あなたがこれから打とうとしている折り込みチラシには何の参考にもなりません。
とんでもなく低い確率
例えば新聞折込広告を30万部打ったとしても、30万人があなたのチラシを待ち望みながら生活をしているわけがありません。この時点で、30万分の・・・と言う計算がそもそも成り立たないのです。
あなた自身でもう一度思い返してみてください。
たまたまタイミングよく手に取った折込チラシを何気なく目を通す時、何秒くらい見ますか?
おそらくほとんどの方が3秒以内でゴミ箱に捨てるはずです。
折込チラシを1年に1回しか打たなかった場合、
まずは見てもらうまでの確率が以下のようになります。
365日×24時間×60分×60秒 で、1年間を秒に直すと31,536,000秒。
そのうちのたった3秒間です。
たまたま配布したチラシがこの3秒間と重なってくれる確率は
3÷31,536,000=0.000000095…
つまり、0.00001%
1年に1回打ったチラシをたまたま手に取って3秒間見てもらえる確率は
0.00001%だということを理解してください。
これを30万部(30万人)に対して実施しているだけなので、
様々な要素を除外して数字だけ(計算だけ)で見ると
0.00001% ×30万人 =3
つまり、自分に都合の良い好条件やシチュエーションを除外して見た時
30万部の折込チラシを年に1回打ったとき
実際に3秒間見てくれる人は3人という計算になります。
範囲より接触回数
上記の計算式を元に、今度は30万部を年に1回打つのではなく
3万部を「同じエリアに」10回打つというパターンで計算してみると
1人に対して3秒見られるタイミングを10回にできるので
30(3秒×10回)÷31,536,000=0.000000095…
今度は 0.0001%となり、一人当たりに見られる確率が10倍に上がります。
これをさらに絞って3000枚のチラシを1年で100回打つと100倍になります。
仮に、宝くじを買うと想定してみてください。
当選金額も購入資金も同じだとして(当たりかハズレの2択しかないくじ)
①1000分の1の確率で当たるくじを100枚買うか
②100分の1の確率で当たるくじを10枚買うか
③10分の1の確率で当たるくじを1枚買うか
パチンコをやる方なら、常識として理解していると思いますが
350分の1で当たるパチンコ台は350回回せば必ず当たるという意味ではなく
毎回毎回の抽選確率が350分の1なので、運が悪い時は1000回も2000回も回しても一向に当たりを引けないということがよくあります。
パチンコをやらない方でもおそらく多くの方が②か③を選ぶと思いますが
折込チラシの配布計画に関する考え方もこれと全く同じです。
資金を湯水の如く使えるのであれば30万部を何回も打つ事で確率を上げられますが
実際にはそんな企業はないので、限られた予算をどのように使うかはもっと慎重に検討すべきです。
それほど
「お客さんにとってちょうど良いタイミングでチラシを届ける」ということの難易度は高いのです。だからピザ屋のチラシは2週間おきにポスティングされ続けているのです。
思い返してみてください。
あなたが今覚えているチラシ、なんのチラシでどんな内容でしたか?
それを覚えているのはなぜですか?
チラシが好きな人の心理
冒頭で「掲示する商品価格次第」と述べたのは「どれだけ安売りできるのか」と置き換えていただいて間違いないです。
とくに興味もなかったものや、購入や検討はもう少し後で(先で)良いと思っているものを「チラシを見て今購入させる」という行為は相応のオファー(特典)が必要です。
そもそも、チラシをよく見ている人たちは総じてこの「オファー」にしか興味を示さない人たちです。
しかもチラシを見て「お得だから今買いに行こう!」と判断できる金額は
ひと月のお小遣い(なくなっても大丈夫な金額)の範疇レベルでしかありません。
なぜなら、衝動的な買い物は「予定外の出費」であり、わざわざ貯金を切り崩したりローンを組んでまで買おうという決断に至るはずがないからです。
逆に、ひと月のお小遣いが50万、100万とかなり余裕のあるような富裕層の方々は、まずチラシを見て何かを買いになんて行きません。
特に富裕層は安いもの(安っぽいもの)や行列に嫌悪感を抱きます。
富裕層は安売りのようなオファーは求めていないので、そもそもチラシを見ません。
新聞をとっていたとしても「ゴミになるから広告は入れない」という契約をしている可能性もあります。
この事実から、広告で反響がありそうな商品の金額はせいぜい1万円以内が限界。
という大筋が見えてくるのではないでしょうか。
※家電製品や車など「そもそもそれを買いたいと思っていた人」は除きます。
例えば、
定価5万円のキャンプ用テントが今月の3台限り在庫処分で1万円!
というような強烈なオファーです。
このレベルのオファーがあれば「別に今すぐ必要なわけじゃないけど、いずれ欲しいと思っていたからこの機に購入しよう!」となりやすいわけです。
失敗しない折込チラシ
失敗しない折り込みチラシというのは単純で
■1万円以下の商品
■衝動買いをさせるほどの強烈な値引き(特典)
■エリアを狭めて配布回数を増やす
この3点を全てクリアして実施すれば大抵の商品はそれなりに反響を期待できます。
では、それに当てはまらない商品やサービスはどうすべきか。
これの答えも単純で
そもそも折込チラシで反響を得ようというという選択自体が間違いです。
これは「デザイン」や「コピー」などの小手先のテクニックでなんとかなるものではありません。その理由はここまでに述べた通りだからです。
特に商品の価格が10万円を超えるようなものの場合、
折込チラシを打つよりLPを作ってウェブ広告を打つ方がよほど無駄がなく効率的です。
なぜなら前途したように、なくなっても構わないお小遣いの範疇を超える買い物は
計画的に、色々調べて、比較検討、吟味して購入するからです。
色々調べて吟味する人は、折込チラシが届くのを待つことはなく、自ら能動的にネットで検索するからです。
それでもどうしても「チラシ」という形にこだわりたい方は、せめて
■手渡し(ピンポン押して直接住民に配って歩く)
■封筒に入れてお手紙として送る
のいずれかで配布してください。
新聞折込やポスティングされたチラシより圧倒的にちゃんと見てもらえます。
さらに可能ならペラペラのチラシではなく、しっかり厚さもあるパンフレットやカタログのようなものを届けてください。捨てられる確率も下げることができます。
高額商品のチラシ対策
ここまで、チラシで反響を期待できる商品サービスの価格帯は1万円~せいぜい10万円程度。とお話してきましたが、不動産・外壁塗装・自動車販売・冠婚葬祭等、そもそも高価格帯の商品サービスを扱う場合も多く、そのような場合はどうすればいいのか?気になる方も多いかと思います。
まずは前述したとおり、タイミングが重要であること。
これは間違いない結論です。
ただ、タイミング以外にも1点工夫できることがあります。
それは、
■フロントエンド商品(低価格帯のお試し商品)
■バックエンド商品(本来売りたい高価格帯の商品)
を使い分けるというテクニックです。
つまり、皆さんいきなりバックエンド商品ばかりをアピールしているから反響・反応が悪いので、
商品・サービスの一部だけを切り取った「フロントエンド商品」を用意することをお勧めします。
例えば、
☑80万円~250万円の外壁塗装の場合:3,800円の「診断士による外壁診断と診断書作成サービス」
☑安売りではない自動車販売等の場合:参加費1,500円の「試乗&ツーリングイベント」
☑注文住宅販売の場合:5,000円の「間取りプラン作成サービス」
等、お買い求めしやすい料金体で、商品サービスの一部を切り取って、その魅力を伝えると同時に「少額でもお金を支払っていただく」というところにポイントがあります。
上記のようなサービスを「無料」で提供するチラシをよく見ますが、あえて「有料」にしてみてはいかがでしょう?
これは決して「たとえ小銭でも稼ぎましょう」という意味ではありません。
無料と謳っていることで、逆に消費者から嫌煙されていることに気づいてくださいという意味です。
無料で診断されたらその後しつこく営業されそう。
試乗してしまったらそのあと断りづらい。
タダで間取りプランまで作ってもらったらその先の話まで付き合わないと…
これが「有料」であることによって、消費者の心理的ハードルが下がる傾向があります。
行動経済学でいう「返報性の法則(受けた恩は返さないと気が済まない)」が働いてしまうからです。
なので、
「お金を払ってサービスを受けたんだから、ここで終わっても問題ない」
そのように考えていただくことでお試し・相談がしやすくなります。
つまり、チラシに対して反応が高まる可能性が上がるという事です。
一度営業担当者の話を聞いてくれさえすれば…
一度うちの製品に触れてくれさえすれば…
一度うちのサービスを味わってくれさえすれば…
そのように自社商品サービスに自信のある方は、このような「フロントエンド商品」を売ってみることも検討してみてください。
実験と検証・改善のみが効果を上げる
これまでに述べたように、結局のところ折込チラシを配布する前から反応率を想定したり、効果を操作するようなことはできないので、
その折込チラシでどのくらい反応率があるかは「やってみるしかない」という事に尽きます。
重要なのは、結果が出てくるまで何度も実施し続けるというところにあるので、年に1回しか実施しないような折込チラシは極論を言えば違う活動に費用を回した方が良いです。もしくは、年に1回1万部配布する程度なら、毎月100部を「同じ家に」ポスティングして反応を見た方が良いです。
結果が出てくるまで何度も実施
もちろん、全く同じものを同じエリアに頻繁に配布し続けてもそれなりの効果はありますが、なんのために繰り返すかというと
「どんな内容のチラシなら反応率が高くなるのか」を知るためです。
なので毎回少しづつ変化を加えてください。
やれることは無限にあります。例えば
■商品の値引率を10%ずつ上げていく
■商品の掲載点数を増やしていく
■値引き以外の特典をつけてみる
■お客様の声を載せてみる
■手書きで作ってみる
■社長の顔を大きく載せてみる
■スタッフの紹介を入れてみる
■用紙のサイズを大きくしてみる
■三つ折りのリーフレットにしてみる
■【保存版】と記載してみる
■クーポンをつけてみる
■クーポンに「ミシン線」を入れてみる
■キャラクターを作って起用してみる
■キャラクターに悪態をつかせてみる
等、基本の内容は大きく変更せずに
少しづつアレンジを加えていきながら実験と検証改善を繰り返してください。
6回くらい実施した時点で、ある程度のテンプレートが見えてきます。
その後はそのテンプレートを繰り返し使い続けてください。
6回実験しても結果が見えてこない場合は「基本の内容」自体に問題があります。
反応率が落ちてきたなと思ったら他のエリアへ広げたり基本の内容自体を見直したり。
このように折込チラシとは、単発で大きな成果を期待できるようなものではなく、
細かいアレンジや都度計測と検証・改善を「やり続けることで反応率を維持する」
という性質のものなのです。